三重の法務労務コンサルタント

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労災保険法における通勤災害について

労災保険法では、通勤災害の定義を以下のように規定しています。

通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。

 この場合の通勤とは、1)就業に関し、2)住居と3)就業の場所との間を、4)合理的な経路及び方法により往復することをいい、5)業務の性質を有するものを除くものとされています。

 しかし、6)往復の経路を逸脱し、又は往復を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の往復は通勤とはなりません。

 ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、7)厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き通勤となります。

 通勤災害は業務外の災害であり、通勤時は使用者の支配下にあるとはいえないことから、本来の労災には該当しませんが、労災保険法による補償がなされます。

保険給付の内容は業務災害と基本的に同じですが、使用者に責任がないところから、3日間の待期期間について使用者に休業補償の義務は生じず、労基法19条の休業中の解雇制限規定も適用されず、労災保険率のメリット制も適用されません。

また、会社への届出と違う経路で通勤していた労働者が災害にあった場合でも、通勤が合理的な経路、方法であれば、労災保険が適用されます。(ただし、届出と違う経路で通勤をしていた件については、社内規定違反として制裁の対象となり得ます。)

労災保険法における通勤の要件をまとめると次のようになります。

1 「就業に関し」とは

 通勤とされるためには、被災当日に就業することとなっていたこと、又は現実に就業していたことが必要となります。

 この場合、ラッシュを避けるための早出など、通常の出勤時刻と時間的にある程度の前後があっても就業との関連は認められます。

2 住居」とは

 労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業のための拠点となるところをいいます。

 天災や交通ストライキ等の事情のため、やむを得ず会社近くのホテル等に泊まる場合などは、当該ホテルが住居となります。

3 「就業の場所」とは

 業務を開始し、又は終了する場所をいいます。一般的には、会社や工場等の本来の業務を行う場所をいいますが、外勤業務に従事する労働者で、用務先と自宅との間を往復している場合には、自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所となり、最後の用務先が業務終了の場所となります。

4 「合理的な経路及び方法」とは

 合理的な経路については、通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしてもそれらの経路はいずれも合理的な経路となります。しかし、特段の合理的な理由もなく、著しく遠回りとなるような経路をとる場合などは、合理的な経路とはなりません。

 合理的な方法については、鉄道、バス等の公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車等を本来の用法に従って使用する場合、徒歩の場合等、通常用いられる交通方法を平常用いているかどうかにかかわらず、一般に合理的な方法となります。

5 「業務の性質を有するもの」とは

 以上の要件をみたす往復行為であっても、その行為が業務の性質を有するものである場合には、通勤とはなりません。

 具体的には、事業主の提供する専用交通機関(例えば、会社のマイクロバス)を利用する出退勤や緊急用務のため休日に呼び出しを受けて緊急出勤する場合などが該当し、これらの行為による災害は業務災害となります。

6 「往復の経路を逸脱し、又は中断した場合」とは

 逸脱とは、通勤の途中で就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれることをいい、中断とは、通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うことをいいます。

 しかし、通勤の途中で経路上近くの公衆便所を使用する場合や経路上の店でタバコやジュースを購入する場合などのささいな行為を行う場合には、逸脱、中断とはなりません。

 通勤の途中で逸脱又は中断があるとその後は原則として通勤とはなりませんが、これについては法律で例外が設けられており、日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により最小限の範囲で行う場合には、逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は再び通勤となります。

7 「厚生労働省令で定める逸脱、中断の例外となる行為」とは

・日用品の購入その他これに準ずる行為

公共職業能力開発施設において行われる職業訓練、学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

・選挙権の行使その他これに準ずる行為

・病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為

・要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母、並びに同居しかつ扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護

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