三重の法務労務コンサルタント

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労働時間制度について

 日本で最初に労働時間に関する規定ができたのは、大正時代の1916年に施行された工場法です。

 工場法は、従業員15人以上の工場に適用され、規制の対象者は15歳未満の年少者と女性のみで、1日の労働時間(工場法では休憩時間を含む拘束時間のことです)は12時間以内、1ヶ月の休日は2日以上とし、午後10時から午前4時までの深夜業は禁止しました。

 その後、1923年に一部改正されて、適用年齢は15歳未満から16歳未満へ引き上げられ、1日の労働時間は1時間短縮されて11時間以内となります。

 工場法の労働時間は、労働者の健康確保が目的ですから、時間外労働や休日労働は認めていません。

 戦後、1947年に労働基準法が制定されて、工場法は廃止されています。

 工場法が年少者と女性のみを対象としていたのに対して、労基法は成年男子を含むすべての労働者を対象にしています。(ただし、管理監督者などには労基法の労働時間の規定は適用されません。)

 労基法の制定時には、1日の労働時間は8時間以内、1週間の労働時間は48時間以内、1週間に休日は1日以上、18歳未満の年少者と女性は午後10時から午前5時までの深夜業は禁止となっていました。その後、男女雇用機会均等法の趣旨から労基法の女性保護規定が廃止されることになり、女性の深夜業の規制は廃止されます。

 労基法は、工場法とは異なり、労使協定(36協定)を定めることにより、法定労働時間を越えて時間外労働や休日労働をさせることを認めています。当初、女性については1日2時間、1週6時間、1年150時間という時間外労働の上限と休日労働の禁止を定めていましたが、その後、男女平等の趣旨からこの規制は廃止されます。

 1987年に労基法の労働時間に関する規定が改正され、1週間の労働時間を48時間から40時間へと数年かけて段階的に短縮していくこととされました。

 現在の法定労働時間は、原則として、1日8時間以内、1週間40時間以内、休日は1週間に1日以上(または4週間に4日以上)となっています。

 ここで「原則として」というのは、労基法で、変形労働時間制という変則的な労働時間が定められているからです。

 変形労働時間制とは、1ヶ月あるいは1年の一定の期間を平均して1週間の労働時間が40時間を越えていなければ、特定の日に8時間を越えて、あるいは特定の週に40時間を越えて労働させることができるというものです。

 労基法では、時間外労働については25%以上の割増賃金、休日(週1日の法定休日)労働については35%以上の割増賃金を支払うことになっていましたが、その後一部改正されて、時間外労働のうち、1ヶ月60時間を越える部分は50%以上の割増賃金、36協定の限度時間(1ヶ月45時間、年間360時間など)を越える部分は「25%以上で労使協定で定めた割増率」の割増賃金を支払うこととなりました。

 その改正で少し複雑なのは、労基法では、週休2日制の会社の場合、そのうち1日は法定休日であり、その日に労働した場合は休日労働、他の1日は法定外休日であり、その日に労働した場合は休日労働ではなく、その日を含めて1週間の労働時間が40時間を越えた場合には時間外労働となるので、法定休日の労働の場合は35%の割増率で割増賃金を支払えば問題ないのですが、法定外休日の労働の場合には、平日の時間外労働と合計して60時間を越えていれば越えた時間については35%ではなく50%、45時間を越えていれば超えた時間については労使協定で定めた率の割増賃金を支払わないと労基法違反になるということです。

 

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