会社は労働安全衛生法などに基づいて、次の要領で従業員の健康診断をすることになっています。
1. 健康診断は1年に1回必ず実施します。
(労働安全衛生法66条1項、労働安全衛生規則44条)
会社は、従業員に対し、1年に1回、定期に健康診断を実施しなければなりません。
また、従業員側も、健康診断を受診しなければなりません。
これを「一般定期健康診断」といいます。
「一般定期健康診断」は、従業員が健康で働くことができるように実施するものです。
健康診断の目的は、隠れている病気の発見だけではありません。年齢とともに変わる体の機能を調べ、健康を維持させるというねらいもあります。
◎ 派遣社員は…
派遣社員の一般定期健康診断の実施については、派遣会社(派遣元)に義務づけられています。ただし、有害業務に派遣社員をつかせている場合は、派遣社員の派遣を受けている会社(派遣先)に対して、特殊健康診断(後述3.有害業務従事者は…の項)の実施が義務づけられています。
- 深夜業等従事者には半年に1回の健康診断を実施します。
(労働安全衛生法66条1項、労働安全衛生規則45条)
深夜業は身体の調子を崩しやすく、より手厚い健康管理が必要です。
会社は、深夜業従事者、著しく暑熱・寒冷・振動・強烈な騒音・重量物取り扱い・坑内・有害ガス・蒸気・粉じんなどの環境で働く従業員については、半年に1回、健康診断を受診させなければなりません。
- 有害業務従事者等には特殊健康診断を実施します。
(労働安全衛生法66条2項、有機溶剤中毒予防規則29条他)
有害物は、中毒などの職業病を引き起こすおそれが高いため、特殊な健康診断により、健康管理を行う必要があります。
会社は、シンナー・鉛・クロム酸などの有害物を取り扱う従業員については、特殊健康診断を実施しなければなりません。
有害物の種類によって、健康診断の内容が異なります。
- 雇入れ時に健康診断を実施します。
(労働安全衛生法66条1項、労働安全衛生規則43条)
会社は、新しく雇った従業員に健康診断を実施しなければなりません。
雇入れ時に従業員の健康状態を把握して、雇入れ後の健康管理に役立てるためのもので、この結果により、採用・不採用を決めるものではありません。
検査項目は、一般健康診断と同じ(ただし、喀痰検査は不要。)ですが、検査項目の省略は認められません。なお、雇入れ時の色覚検査は平成13年10月1日に廃止されました。
- 健康診断の結果を従業員に通知します。
(労働安全衛生法66条の6、労働安全衛生規則51条の4)
会社は、健康診断を受診した従業員に対して、遅滞なくその結果を通知しなければなりません。
- 健康診断の結果は記録して保存します。
(労働安全衛生法66条の3、労働安全衛生規則51条)
健康診断の目的は健康診断そのものにあるのではなく、把握した個人の健康状態を基に、個人及び集団としての情報を医療指導、保健指導、作業方法、作業環境の改善等の措置を行うことにあります。
このため、健康診断の結果は、経年変化がわかるように、個人毎に整理され、同時に集団として目的に応じて活用しやすいように統計学的に整理されることが大切です。
健康診断結果は、5年間保存しなければなりません。
また、法定健康診断を実施したときは、その結果を所管の労働基準監督署長に遅滞なく届けなければなりません。(労働安全衛生規則52条)
- 健康診断の結果について、医師から意見を聴きます。
(労働安全衛生法66条の4、労働安全衛生規則51条の2)
会社は、健康診断の結果、異常の所見があった従業員の健康保持のために必要な措置(就業上の配慮事項など)について医師(産業医)から意見を聴かければなりません。
- 医師からの意見に基づき改善措置を実施します。
(労働安全衛生法66条の5)
会社は、健康診断で異常の所見があった従業員について、医師からの意見を勘案して就業上の措置や作業環境の改善を実施しなければなりません。
(1) 就業上の措置
会社は、異常の所見のあった従業員の健康を保持するため、医師の意見に基づき、就業上の措置(就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業回数の減少など)を決定する場合には当該従業員の意見を聴き、了解が得られるようにします。
(2) 作業環境の改善
会社は、異常の所見のあった従業員の健康を保持するため、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、作業方法の改善その他の適切な措置を決定する場合には、安全衛生委員会を開催して調査審議します。
- プライバシー保護に留意
個々の従業員の健康に関する情報は、個人のプライバシーに属するものですから、その保護に留意し、特に就業上の措置の実施に当たって、関係者へ提供する情報の範囲は必要最小限のものとします。