三重の法務労務コンサルタント

仕事(人事労務、海外人事、税務、法務など)で学んだことや、趣味(歴史や旅行など)で感じたことなどを記載します

パワーハラスメントについて

 中央労働災害防止協会の調査によると、4割以上の企業がパワーハラスメントパワハラ)やこれに類似した問題が発生していると答えているそうです。

 パワハラは被害者に対し、士気の低下や能力の低下、心の健康を害する等の問題をもたらします。ひどいケースでは、うつ病や重い精神障害に罹り、場合によっては自殺者を出すこともあります。

 企業にとっても、職場風土の悪化や社員のパフォーマンスの低下、被害者へのサポートなど、さまざまや影響をもたらします。

 また、加害者や事業主への損害賠償責任などの法的責任を問われることもあります。裁判で違法なパワハラの責任を問われ、3100万円もの賠償が認められた判例もあります。パワハラの内容が刑法の規定(傷害罪、名誉毀損、侮辱罪など)に該当する場合には、被害者は加害者を警察・検察に対して刑事告訴する事もあります。パワハラによりメンタル不全に陥った場合には、労災認定される可能性もあります。

 以上のように、パワハラは企業にとって大変重要な経営上の問題になっているようです。

 現時点では、パワハラについての法的な定義はありませんが、裁判例などから、21世紀職業財団では、「職場において、職務上の地位や影響力に基づき、相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより、その人や周囲の人に身体的・精神的な苦痛を与え、その就業環境を悪化させること」と定義されています。

 その定義によれば、パワハラの判断基準は次のようになります。

1.職場において

  業務を遂行する場所を指しますが、時間外の宴会や休日の連絡などであっても、業務上の失敗を責める等、実質上の職務の延長である場合には該当します。

2.職務上の地位や影響力に基づき

  上司が部下に対し、その地位に基づいて行う行為です。直接の上司以外でも実質的に影響力がある者の行為も含まれます。

3.相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより

  業務上の必要性がない場合、合理的理由がない場合、業務上の監督・指導・教育であっても、相当性(表現、回数、態様等)を欠いている場合や、人格を非難、否定する内容の発言が該当します。著しく粗野・乱暴な言動も問題です。感情的な叱責も控えるべきです。

言動の例

  • 大声で怒鳴る、ゴミ箱をける、机をたたく、灰皿を投げる
  • 長時間部下を机の前に立たせたまま、ミスを執拗に責める

4.その人や周囲の人に身体的・精神的苦痛を与え

  本人がその出来事をどのように受け止めたかではなく、多くの人が一般的にどう受け止めるかという客観的な基準によって評価します。

5.その就業環境を悪化させる

  本人、周囲の人々の就業環境が不快なものとなったため、能力が発揮できないなどの看過できない程度の支障が生じることです。

 ただし、業務上必要な指導を、相当性を欠くとはいえない範囲で行うことは、相手がどう受け止めようと、パワハラではないといえます。業務上適切な指導は行わなければなりませんので、この点、注意が必要です。

 

 

 

 

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