○ パワハラとは
パワーハラスメント(パワハラ)とは、一般的には、上司が部下に対し、職権などのパワーを背景にして、本来業務の適切な範囲を超えて、継続的に、人格や尊厳を侵害する言動を行い、精神的苦痛を与え、働く環境を悪化させ、あるいは雇用不安を与えることをいいます。
上司に当たる方は、以下のチェックリストで、ご自分のパワハラ度をチェックしてみましょう。
□ たびたび部下を説教している
□ 部下の性格等を攻撃したことがある
□ 部下を怒る時に、周囲の状況を気にしたことはない
□ 問題がおきたとき、部下のせいにしたことがある
□ 相性の合わない部下は、無視したり怒鳴りたくなる
□ 誘っても飲みに来ない部下は嫌いだ
□ 部下に意見を述べられるとむかつく
□ 突然休暇をとる部下がいる
□ 今までに複数の部下が辞めたことがある
□ 部下が精神的な病気になったことがある
□ 自分の意見に反論をする部下はいない
このチェックリストは、パワハラ的な行為およびパワハラを起こす可能性のある心理状態です。該当すれば、日頃、無意識に部下に対して行っていることが、パワハラになっている可能性があるといえるでしょう。
○ セクハラを中心とする女性へのパワハラ
セクハラは、一定の男性たちが女性に対して間違った理解を常識に近い感覚で身につけてしまっているという問題があります。
第1は、「独身の女性たちが会社に来るのは、将来の保護者となるべき伴侶を探しにくるのであって、仕事をしに来ているのではない」と思い込んでいる男性たちです。
第2は、「女性は家庭を守って子供を育てるのが一番幸せなはず」「女性があんなに働いては亭主がかわいそうだ」などと思っている男性たちです。
第3は、女性の服装や化粧を男性に対する挑発とみたり、「酒を飲む女性や、男性との付き合いが多い女性はふしだらだ」と思っている男性たちです。
こうした見方で職場の女性に性的な関心を示してしまう男性たちは、セクハラ事件を起こしてしまいます。「女性はかくあるべき」「女性とはこういうものだ」というジェンダーの呪縛にとらわれた上で「男性と女性は違う」「男性はいいが、女性はダメ」というダブルスタンダードに支えられて事件を起こしてしまいます。このような男性たちの認識が変わらないかぎり、セクハラを中心とする女性へのパワハラ被害はなくならないでしょう。
パワハラは、一般的には個人の特異な性格や環境が原因となって起こるものです。
・ パワハラを起こしやすい上司
(1)過去に栄光の時期があったが、今は自身を失っている人
かつては社内で実力が認められ、華々しい時期があったが、今はIT化など時代の流れについていけず、自信を失っている人
(2)学歴などに劣等感をもつ人
学歴や家庭環境などに恵まれず何となく劣等感をもっている人
(3)職場や家庭に居場所のない人
社内にも家庭にも居場所がなくなり、「うさ晴らし」のためパワハラに走っている人
・ パワハラされやすい部下
自立心が弱く、いつも「NO」と言えない、従順で優柔不断な人や、組織の中で孤立している人が多いといわれています。逆にパワハラされにくい部下は、自分のキャリアプランを確立し、しっかりした信念をもっている人に多いといわれています。
○ 会社としての対応策
これまで、パワハラは個人が起こす個人的な問題だから、会社とは無関係で、個人的に対処すべき問題であると考えられてきました。しかし、パワハラは、放置しておくと、社員の名誉や尊厳を傷つけ、さらなるモラールダウンをもたらし、会社の業績や社会的信用の問題にまで発展しかねないのです。
最近では、パワハラは労働問題であり、職場における人権侵害の問題であること、また同時に、働きやすい職場環境づくりの問題であることが認識されています。パワハラが訴えられた場合には、労務管理上の問題として取り上げていく姿勢が必要です。
(1)会社としての方針の明確化
「パワハラとは何か」、「社内にパワハラを起こさない」、「パワハラに対しては厳正な処分をする」などの会社としての基本方針を定め、全社員に徹底するとともに、管理職研修などでも取り上げる。また、就業規則の懲戒の項目にそのことを明記する。
(2)パワハラ相談窓口、処理体制の設置
問題が発生した場合、迅速かつ適切に問題を処理するためには、まず相談に対応する窓口を設置することが大切です。また、相談窓口での解決が困難な場合や重大な内容と判断される場合を考えて、事実関係を調査・確認し問題の解決に当たる処理体制を充実させておくことも大切です。
(3)パワハラが起きたときの迅速・厳正な対応
不幸にしてパワハラが起きてしまったときは、その実態と原因の正確な把握と、加害者に対する厳正な処分が必要となります。事件をうやむやに処理してしまったら、被害者の不信と不満を増幅させてしまいます。