三重の法務労務コンサルタント

仕事(人事労務、海外人事、税務、法務など)で学んだことや、趣味(歴史や旅行など)で感じたことなどを記載します

定年退職時の手続

定年退職時(継続勤務しない場合)には次のような手続が必要になります。

  • 健康保険

 定年退職後、再就職をしない場合や、再就職をしても労働時間が一般従業員の4分の3未満となり健康保険の加入要件を満たさない場合には、次のような取扱になります。

 いずれも、70歳になるまでは通院・入院時の自己負担割合は3割なので、選択のポイントは保険料となります。

  • 健康保険被保険者の扶養家族となる。

   配偶者や子供が健康保険の被保険者である場合、一定の要件を満たしていれば被扶養者となることができます。被扶養者となる場合には被保険者(配偶者や子供)の勤務先へ届け出ることになります。この場合には、本人が保険料を負担することはありませんし、被保険者(配偶者や子供)の保険料が増加することもありません。

   被扶養者となれる一般的な要件は、対象者の年収が130万円未満(60歳以上の人は180万円未満)で、被保険者の年収の2分の1未満であることとなっています。サラリーマンが退職して年金や失業保険を受け取ると年収条件を満たさない場合が多く、その場合には次のいずれかの取り扱いとなります。

(2)健康保険の任意継続被保険者となる。

   任意継続は、退職後もそれまでと同じ健康保険の被保険者になる方法です。住所地の社会保険事務所(または加入していた健康保険組合)で手続きをします。加入できるのは2年間で、在職中は会社と折半していた保険料が、任意継続になると全額自己負担となります。但し、保険料は①退職時の標準報酬月額と、②加入していた健康保険の標準報酬月額の平均額(政府管掌健康保険の場合は現在30万円)のいずれか低い額に基づいて算定されます。定年退職者の場合は②が適用されるケースが多くなります。

(3)国民健康保険に加入

   健康保険被保険者の扶養家族とならず、健康保険の任意継続被保険者ともならない場合には、国民健康保険に加入することになります。国民健康保険は市町村単位ですから、市町村で手続をします。国民健康保険の保険料は、各市町村が条例で定めることになっており、計算方法も市町村によって異なっています。一般的には前年度の所得を基準とするため、定年退職時に加入すると前年の所得が高いため保険料が高くなる傾向があります。そのため、退職直後は任意継続を選び、そのあとで国民健康保険に切り替えるという方法をとれば保険料を低く抑えることができます。

2.厚生年金

 昭和36年(女性は41年)4月1日以前に生まれた人は、老齢厚生年金の報酬比例部分が支給されます。ただし、支給開始年齢は生年月日により異なります。年金を受け取るためには、自分で裁定請求(用紙は事前に送られてきます)を行います。請求先は退職前の勤務先を管轄している社会保険事務所(共済組合や厚生年金基金に加入している人は、共済組合や基金)となります。

 第3号被保険者だったサラリーマンの妻などで、夫が退職するときに60歳未満の人は、夫の退職によって第1号被保険者に変わりますので、住所地の市町村の国民年金担当窓口で種別変更の手続を行い、60歳になるまで国民年金の保険料を納めなければなりません。

3.雇用保険

 定年退職後雇用保険の基本手当を受給するためには、ハローワークで求職の申し込みをして、受給資格の決定を受ける必要があります。そして原則として4週間に1回ハローワークへ行き、失業の認定を受けることによって、基本手当を受給することができます。基本手当の日額は60歳以上65歳未満で離職した場合、賃金日額(離職前の賃金)の45~80%(賃金が低いほど高い率となる)となっており、上限は7,186円となっています。基本手当の給付日数は、被保険者期間が20年以上の場合150日となっています。

4.税金

(1)給与所得税

   退職した年は年末調整をしていませんので、退職までに支払われた給与の額により異なりますが、一般的には、翌年に確定申告をすれば所得税が還付される場合が多くなります。

(2)住民税

   住民税は、1年間の所得に対する税金を翌年6月から翌々年の5月にかけて毎月の給与から支払うことになっています。退職時の前年分の未納税額は、最後の給与等から一括徴収する方法と、本人が市町村に納付する方法とがあります。退職した年度分の住民税は、退職した年の所得に応じて翌年6月に市町村から納付書が送られてきます。

(3)退職金に対する税金

   退職所得にも所得税と住民税がかかりますが、退職所得控除があるので、一定額までは課税されません。

   退職所得控除額の計算は次のとおりです。

   ・ 勤続年数20年以下の場合: 40万円×勤続年数

   ・ 勤続年数20年超の場合 : 800万円+(勤続年数-20年)×70万円

  退職金の額から退職所得控除額をマイナスした残額の2分の1が、課税所得額となります。

  課税される場合でも、一般的には所得税と住民税は源泉徴収されるので、本人が確定申告をする必要はありません。

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