海外勤務者の退職金については、海外勤務中に定年を迎え、非居住者として退職金を受け取った後も引き続き嘱託等として海外勤務を続ける場合と、帰任後退職を迎え、居住者として退職金を受け取る場合とがあります。
退職金に対する課税については、退職金の支払いを受けたのが非居住者である海外勤務中であるか、帰国後の居住者となったときであるかによって課税方法が大きく異なります。
1.海外勤務中に日本の会社から退職金を支給される場合
日本では非居住者として総支給額のうち、国内勤務に対応する金額については、国内源泉所得として一律20%の所得税を源泉徴収されます。海外の勤務地でも、日本で受け取った退職金について納税する義務が生じる可能性があります。
2.帰国後に日本の会社から退職金を支給される場合
居住者として総支給額から退職所得控除額を差し引いた残額の2分の1が退職所得となり分離課税されます。
3.退職所得の選択課税
海外勤務者が退職金の支払いを受けた時期が、たまたま非居住者であったときか、居住者であったときかによって大きく税負担が異なるという問題を解消するために、「退職所得の選択課税」という課税方法が定められています。
「退職所得の選択課税」とは、納税者の選択により、居住者として当該退職金を受けたものとして計算した税額が源泉徴収された税額より少額の場合には、確定申告書を提出して、その差額を還付してもらうというものです。
海外勤務者に退職金を支払う場合には、多大な税負担が発生することがあるということに注意する必要があります。
(例) 退職金の支払額 2100万円
勤続期間 35年(国内25年、海外10年)
(日本で支払う税額)
1. 非居住者として支払いを受けた場合
国内勤務に対応する退職金=2100万円×25年/35年=1500万円
税額(所得税)=1500万円×20%=300万円
2. 居住者として支払いを受けた場合
退職所得額=(支払額-退職所得控除額)÷2
=(2100万円-1850万円)÷2=125万円