三重の法務労務コンサルタント

仕事(人事労務、海外人事、税務、法務など)で学んだことや、趣味(歴史や旅行など)で感じたことなどを記載します

定期昇給について

 日本では、ほとんどの会社が毎年4月に賃上げ(賃下げの場合もあるので、正確には賃金改定)を行いますが、新聞記事などを見ると、いつも賃上げの定義が曖昧なために、賃上げ要求額が同じでも、例えば今年の労働組合の賃上げ要求は5,000円になりましたというように賃上げをベアの意味で報道している場合と、10,000円になりましたというように定昇とベアを含んだ意味で報道している場合とがあります。

 基本的にいえば、賃上げというのは定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)という二つの部分から構成されています。

 定昇とは、従業員の能力や貢献度が毎年上がるという考えに基づいて賃金表を作成しておき、個人別にその賃金表に基づき賃金を上昇させることをいいます。ただし、一定年齢から下がる場合や査定により下がる場合もあります。

 定昇の対象となる昇給には、年齢給や勤続給のような自動昇給、人事考課の査定が反映される職能給や役割給のような査定昇給、昇格の際に昇給する昇格昇給、役職登用や上位役職への昇進の際に昇給する昇進昇給などがあります。

 最近では、賃金体系を年功主義的なものから能力主義成果主義的なものへ変えるため、定昇制度を見直したり廃止したりする企業が増えていますが、定昇制度を廃止した企業でも例えば初任給20万円で入社して定年までずっと20万円ということは考えられないため、実際には賃金体系を変えて自動昇給を廃止しただけで、その他の定昇は実施しているのだと思われます。

 ベアとは、その賃金表の金額を修正して賃金を上昇させることです。定昇と異なり、賃金表そのものを変えて昇給させることです。

 定昇は、賃金表に基づいて昇給させるものですから、従業員個人の給与は上がっても、企業全体の人件費は変わりません。

 例えば、ある会社に20歳から59歳まで従業員が一人ずつ計40名いて、20歳の給料が20万円、21歳の給料が20万5千円、以下1歳ごとに5千円ずつ上がり、59歳の給料が39万5千円だったとします。新年度に、20歳の社員が新しく入社して、60歳になった社員が定年で退職したとして、定昇を実施すれば20歳の新入社員の給料は前年と同じ20万円、前年20歳で今年21歳になった社員の給料は5千円上がって20万5千円に、以下同様に5千円ずつ上がって58歳から59歳になった社員の給料は39万円から39万5千円に上がっていますが、会社全体の人件費は前年と同じで、20歳の20万円から59歳の39万5千円までの計40名となります。

 ベアは、賃金表を修正して昇給するものですから、企業全体の人件費もその分上昇します。

 例えば、前記の例で賃上げが6千円(ベアが千円・定昇が5千円)だとすれば、新年度の20歳の給料は20万1千円、21歳の給料は20万6千円、59歳の給料は39万6千円となり、会社全体の人件費は千円×40名分で、前年より月4万円増えることになります。

 ただし、上記の例は定昇の考え方を分かりやすくするために単純化したもので、実際には年齢別の人員も違い、平均の定昇額が5千円だとしても7千円上がる人も3千円しか上がらない人もいて、ずっと複雑ですが、賃上げの定昇とベアに関する基本的な考え方は同じだと思います。

 

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 PVアクセスランキング にほんブログ村

プライバシーポリシー お問い合わせ