三重の法務労務コンサルタント

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アメリカの人種差別主義者

 5年ほど前に人種差別、宗教・民族差別、女性差別的な発言を繰り返していたトランプ氏がアメリカの大統領選で当選したことに驚いていたのですが、さらに翌年に中東やアフリカなど7か国の人の入国を禁止したトランプの大統領令について、世論調査ではアメリカの49%の国民がそれに賛成しているという報道には驚きました。

 最近の世論調査でも、アメリカ国民の41%(特に共和党支持者の85%)が、前トランプ政権時代の政策を支持しています。

 今のアメリカは黒人のオバマさんが大統領になったり、女性のクリントンさんが有力な大統領候補になったりしていたので本当に自由で平等な民主主義の国になっており、人種・宗教・性別などにかかわらず、誰でも能力に応じて活躍できるような国になっているのかと思っていたのですが、いまだにアメリカの白人には根深い人種差別意識が残っていたようで随分とショックを受けました。

 今のアメリカの住民は約62%が白人で約38%が有色人種ですが、トランプ氏を支持した有色人種はほとんどいなかったようですから、白人のうち6割以上の人はトランプ氏を支持していたようで、いまだにアメリカの白人には人種差別意識がそんなに残っているのかと本当に驚きました。

 ただし、まだ希望が持てるのは、アメリカの白人でも知識人などはほとんどトランプの差別主義政策に反対していたこと、全米で数百万人の白人などの若い男女が反トランプのデモに参加していたこと、ヨーロッパでも多くの白人などがトランプの人種差別主義に反対してデモに参加していたことですね。

 

 アメリカでは南北戦争後の1865年に奴隷制度が廃止されましたが、黒人に対する差別はその後も続いていたようです。

 例えば、1884年にはアメリカの大リーグで有色人種排除の不文律の取り決めがされており、その後1947年にジャッキー・ロビンソンドジャースでプレイするまでの約60年間黒人など有色人種は一人も大リーグではプレイしていません。

 彼は太平洋戦争の時に大学を中退して陸軍に入隊したのですが、バスの中で前部座席に座っている黒人(有色人種)は白人にその席を譲り後部座席に移らなければいけないという規則に逆らって白人に席を譲らなかったので、陸軍を解雇されています。

 太平洋戦争においても、黒人兵士が戦線で戦う場合は黒人部隊としての参戦しかできなかった上に、航空隊から黒人は排除されており、さらに黒人が佐官以上の階級に任命されることもなく、アメリカの軍内には制度的な差別や感情的な差別が蔓延していたようです。

 除隊後、彼は黒人なのでメジャーリーグではプレイできず黒人リーグでプレイしていたのですが、当時のドジャースの社長がメジャーリーグに黒人選手を起用したいという革新的な考えをもっていたので、ドジャースと契約することになりました。

1947年に彼が黒人として初めてメジャーリーグでプレイすると、ドジャース相手にはプレイしないというチームや彼の頭めがけてボールを投げてくるピッチャーもいたそうです。その後、彼はMVPを受賞したり、ドジャースを6度リーグ優勝させるなどの活躍をしています。

 1955年には、黒人女性のローザ・パークスが公営バスで運転手から白人に席を譲るように命じられたが、バークスがこれを拒否したため、「人種分離法」違反で警察官に逮捕され投獄されるという事件を契機に黒人のバス・ボイコット運動も起きています。

 

 私が中学生の時に学校の英語の先生から聞いた話ですが、先生は太平洋戦争の終戦時にシンガポールで捕虜となったことがあったが、その時にイギリス人の若い女性が日本人捕虜の若い男性がいる前で平気で裸になって風呂に入ったのでショックを受けたという話を聞きました。私はその話を聞いて最初若い女性の裸を見れたのに何でショックを受けたのかと不思議に思ったのですが、先生が言うには、お前たちも犬に裸を見られても恥ずかしくはないだろうが、同じ人間の異性に裸を見られたら恥ずかしいだろう、そのイギリス人の若い女性は我々日本人の若い男性を同じ人間だとは思っていなかったのでショックを受けたのだと言われました。

 

 20世紀初頭のアメリカでは、黒人だけではなくすべての有色人種に対する制度的な差別が、合法的に行われていたようです。これらの人種分離法は、交通機関やトイレ、学校や図書館、ホテルやレストランなどにおいても、白人が有色人種すべて(当然、日本人も含まれています)を分離することを合法とするものでした。

 1950年代後半から、アメリカでは黒人など有色人種が白人と平等な諸権利を要求する公民権運動が活発になり、1961年に大統領となったケネディは黒人に公民権を認め、差別撤廃に乗り出す方針を示し、キング牧師らが差別に反対する黒人や白人を指導して政府にその政策の即時実施を迫りました。

 法律上は人種差別の終わりとなるこの公民権法が成立したのはケネディ大統領暗殺後の1964年ですが、公民権運動に対する多大な貢献が評価されノーベル賞も授与されたキング牧師は、その4年後に貧困労働者だった白人によって暗殺されています。

 人種差別が法的に撤廃されて50年以上経っても、アメリカの白人の潜在的な人種差別意識はなかなか無くならないようですね。

 

 

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