三重の法務労務コンサルタント

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個人の債務整理について

 現在、消費者金融サラ金)、信販ローン、商工ローン、高金利業者等の金融業者を複数件利用して、多重債務超過に陥り、返済困難または支払不能となっている債務者は、全国で数百万人いると言われていますが、そのうち多くの債務者は有効な債務整理手続をとっていないようです。

 法律は、多重債務で困っている人を助けるために、任意整理、特定調停、民事再生、自己破産という4つの法的な手続を用意しています。

 

1.任意整理

  任意整理は、法律専門家が各債権者(金融業者)と和解交渉をして、利息制限法や出資法に基づき再計算をして、過払金充当額(払い過ぎた利息を元金に充当して残金を減額)・債務不存在確認(払い過ぎた利息を換算すると既に債務が無い)・過払金返還請求(払い過ぎた利息を全額返してもらう)・不当利得返還請求等の法的手段を用いて負担を軽減させ、正当な債務が残存する場合には無理の無い返済を目的とした合意和解により債務整理を行うという制度です。

 任意整理は、裁判所を通さないため、債権者はこの話し合いに応じる義務がありません。事実上、債務者個人で債権者にかけあっても、相手にされないことが多いため、法律専門家の関与が必要になります。依頼を受けた弁護士、認定司法書士は事件を受任した旨の通知を各債権者に送ることになり、各債権者はその通知を受け取った時点から、依頼人に対して直接取立てをすることができなくなります。債権者との和解案ができた場合には、和解案に従って、原則3年間で債務を返済していくことになります。

 債務者の負担を軽減できる理由は、ほとんどの金融業者が「利息制限法」に違反しているからです。利息は、利息制限法と出資法という2つの法律で決められています。利息制限法の上限は、元金の額により年15~20%ですが、これに違反しても罰則はありません。一方、出資法の上限は年29.2%と定められており、これに違反すると5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処せられることになります。任意整理や特定調停では、今までの支払いのうち利息制限法の上限利率を越えている部分を計算しなおして元金の支払いに充当し、債務を減額させます。

 ただし、銀行などの金利が低いところで借金をしている場合は元金の減額はできませんし、3年程度の期間で返済していかなければなりませんので、借金の総額が大きい場合には、無理な返済計画を立てるよりも、最初から自己破産を選択した方がいいと思います。

 

2.特定調停

 特定調停は、簡易裁判所の管理下で、調停委員会が各債権者と債務者の仲介に入り和解協議をして、利息制限法や出資法に基づき再計算をして、過払金充当額・債務不存在確認・過払金返還請求・不当利得返還請求等の法的手段を用いて負担を軽減させ、支払義務のある債務に対しては原則3年間無利息にて支払計画を立て、余裕のある分割返済を目的とした協議和解により債務整理を行うという制度です。特定調停の手続完了後は、返済額に利息をつける必要がなくなります。

 特定調停は、裁判所における任意整理のようなもので、裁判所が間に入り話し合いを行いますので、専門家に依頼しないで、自分で申立をしても不利益になることはありません。

 特定調停で合意が成立した場合に作成される調停調書には判決と同じ効力があります。

 特定調停の問題点は任意整理と同様で、低い金利で借金をしている場合には元金が減ることはありませんので、あまり効果的な債務整理の方法ではありません。

 

3.個人の民事再生

 民事再生とは、裁判所の監督のもとに、債務の支払いを停止した上で、債務の一部免除や長期の弁済条件などを盛り込んだ再生計画に基づき返済を行うという制度です。

 個人の民事再生は、債務者の管轄の地方裁判所に申立をして、自宅等の所有不動産物件を保守しながら、住宅ローン以外の債務を、小規模個人再生または給与所得者等再生のいずれかの方法で、原則として負債総額の20%を原則3年間にわたり弁済してゆき、住宅ローン自体も最長10年間支払期間を延長することができ、マイホームを失う事なく債務の大幅な圧縮を行うという制度です。

 ただし、マイホームを所有していない場合や処分されると困るような財産が無い場合は、わざわざ民事再生を選択するメリットがありませんので、自己破産を選択した方がいいと思います。

【個人民事再生の条件】

 1)住宅ローン等を除く無担保債務総額が5,000万円以下で、将来において固定的に収入を得られる見込があること

 2)小規模個人再生については、債権者数・債権総額の50%以上の同意があること

   (給与所得者等再生の場合は、債権者の同意は不要です)

 

4.自己破産

  自己破産は、債務超過で苦しんでいる人を救済し、再び立ち直るチャンスを与えるために作られた制度です。従って、一般に考えられているほどの不利益があるわけではなく、免責さえ受けてしまえば今後の生活に支障があるとすれば7年間はローンやクレジットの利用ができなくなるということだけです。戸籍や住民票に記載されることはありませんし、選挙権も失われません。官報で公告されることになりますが、一般の人が官報を見ることはほとんどないと思いますので、多分、一般の人に知られることもないと思います。

 申立人はまず申立書を申立人の住所地を管轄する地方裁判所に提出することになりますが、自己破産をするための要件を満たしていなければなりません。自己破産をするための要件とは、借金をどうしても返せない状態であると裁判所が判断した場合になります。目安としては、申立人の収入から最低限の生活費を引いた残りの額で、借金を3年以内に分割返済できなければ、支払い不能の状態と判断されます。

 自己破産では、借金についての責任を免除してもらう代わりに、生活必需品などを除いて、所有している財産はすべて処分の対象になってしまいますので、どうしても手放したくない財産がある場合などには、他の方法を選択しなければなりません。

 破産手続きとして「管財事件」と「同時廃止事件」とがあります。「管財事件」とは破産宣告の後、一定の財産(99万円以上)がある場合などには破産管財人(裁判所から選任された弁護士で、破産の申立を依頼した弁護士とは違います)が選任されて財産や借金を調査し、換金して債権者に配当するという手続を行うものです。「同時廃止事件」とは、債務者に財産が無い場合などにこの手続を省略するものです。

 破産宣告の後、免責の申立をし、免責の決定がされれば借金は帳消しとなり、ローンやクレジットが利用できなることを除き、自己破産手続中に受ける不利益(弁護士や税理士等の一定の職業に就けなくなるという資格制限など)も解除されることになり、破産宣告以前の状態に戻ることになります。

 

 

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