三重の法務労務コンサルタント

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ネガティブオプションについて

 消費者が注文していないのに、突然商品を送りつけてきて代金を請求する商法のことを「ネガティブオプション(送りつけ商法)」といわれています。特定商取引法では、ネガティブオプションについてのルールを定めています。

 

1.送りつけられた商品の代金はどうすべきか

① 契約は成立していない

  契約は、売り手と買い手との間の合意があって、はじめて成立します。

 ネガティブオプションの場合には、消費者からの注文がないのに、一方的に事業者の方から商品を送りつけてきています。この事業者が消費者のところに商品を送りつけるということが、事業者からの消費者に対する「契約の申込み」に該当することになります。消費者が、この申込みに対して、購入するという承諾をすれば、売買契約は成立します。

 しかし、消費者が承諾しなければ契約は成立しません。ただ受け取ったというだけでは承諾したことにはなりません。

 承諾は、相手の事業者に対して、「契約します」と連絡するとか、購入するつもりで代金を支払うなどの方法で通知をする必要があります。

 消費者が商品を受け取っただけでは、事業者に承諾の通知をしていないので、契約は成立していません。

 ② 商品を返送しなければ契約は成立するか

 ネガティブオプションの場合には、「商品を返送しなければ契約は成立するので、代金をお支払いただきます」などという一方的な文書を同封してくるものもあります。こういう場合に、商品を返送しないと事業者がいうように契約は成立するのでしょうか。

 契約は売り手と買い手との合意により成立します。合意がないのに、契約が成立するはずはありません。

 ③ 支払義務はない

  契約が成立していない以上、代金を支払う義務はありません。

 

2.送りつけられた商品はどうすればいいか

 ① 商品の返送義務

 それでは、送りつけてきた商品はどうすればよいのでしょうか。購入して代金を支払えば、その商品は消費者のものになるので、どのように扱おうと消費者の自由です。

 しかし、購入しないのであれば、商品は送りつけてきた事業者の所有物です。他人のものを勝手に廃棄処分したりすると所有権を侵害したことになり、結果的に代金や時価相当額を支払わなければならなくなります。

 それでは、その商品を消費者が事業者に変換する必要があるのでしょうか。他人のものを預かってしまった場合には、所有者が引き取りにくるまでは保管すべき義務があります。しかし、商品を変換すべき義務までは生じません。

 ② 商品の保管期間

 しかし、勝手に事業者から送りつけられてきたものを、事業者が取りにくるまでは保管していなければならないというのは、消費者にとっては負担になります。

 そこで、特定商取引法では、売買契約に基づかないで商品を送付した場合で、消費者が契約の申込みに対して承諾をせず、事業者が商品の引き取りもしないままで、送付があった日から14日間を経過した場合には、事業者は商品の変換を求めることはできないと定めています。

 つまり、商品が届いてから14日を過ぎても事業者が商品を引き取りにこなかった場合には、その商品を処分してもよいということになります。

 ③ 商品の保管期間の短縮

 もし、商品を14日間も保管しておくのは嫌だという場合には、事業者に対して商品を引き取るように要求すれば、引取りの要求をしてから7日を経過しても引き取りにこない場合には、保管する必要はなくなります。

 

3.会社宛てのネガティブオプション

 ① 商行為には適用されない

 特定商取引法は、「商行為となる売買契約の申込みについては適用しない」とされています。会社の行う取引は商行為とされています。会社宛に商品を送りつけてきた場合には、特定商取引法の適用はありません。

 ② 売買代金の支払い義務

 ただし、これは保管期間を14日間に限定するという制度が及ばないという意味に過ぎません。

 商行為の場合にも、商品を送りつける方法で契約の申込みをした場合には、商品を受け取ったり変換しないというだけで、売買契約が成立するわけではありません。売買契約が成立するためには、申込みと承諾の意思が一致し、合意が成立している必要があります。

 契約が成立していなければ代金を支払う義務もないのは当然です。

 ③ 受け取った商品の扱い

 それでは、受け取ってしまった商品はどうすればよいのでしょうか。受け取ってしまった場合には、「送りつけてきた事業者」が引き取りにくるまで商品を保管する義務があるとされています。

 最初から、宅配や郵便で送られてきた荷物などは、依頼したものでない場合には受取り拒否をすることが一番ですが、受け取った後で、依頼したものでないことが判明した場合には、相手の事業者がいつ回収にくるか予想がつかないので、速やかに返送する方が安心です。送りかえす場合には、着払いで返送すればよいでしょう。

 

 

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