贈与税とは、生存する個人から財産をもらった場合にかかる税金です。
亡くなった個人から財産を取得した場合には贈与税はかかりませんが相続税がかかります。法人から贈与により財産を取得した場合にも贈与税はかかりませんが所得税がかかります。
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの制度があり、一定の要件に該当する場合に「相続時精算課税」を選択することができます。
1.暦年課税
贈与税は、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与により取得した財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。税率は10%~55%の累進課税となっています。
例えば、12月に父から一度に500万円の贈与を受けた場合、その年の贈与税は
(500万円-110万円)×20%-25万円=53万円 となります。
父から12月に250万円、翌年1月に250万円と500万円を2回に分けて贈与を受けた場合、その年と翌年の贈与税はともに
(250万円-110万円)×10%=14万円 となります。
基礎控除と累進税率の関係で、500万円を2年間に分けて贈与すると、1度に贈与する場合より贈与税が25万円安くなります。(53万円-14万円-14万円=25万円)
2.相続時精算課税
相続時精算課税は、60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子又は孫への贈与が対象です。贈与者ごとに計算し、通算で2500万円までの取得なら贈与税はかかりません。2500万円を超える部分については、一律20%の贈与税がかかります。
この制度は、一度適用を受けると暦年課税の制度には戻れません。
相続時精算課税の適用を受けて、贈与者である父母が亡くなった場合には、相続財産にこの制度で受けた贈与財産の価額を加えて相続税を計算しなければなりません。すでに納めた贈与税相当額は相続税額から控除します。
この制度は、相続税のかからない人から生存中に高額の贈与を受けるときに便利な制度です。
贈与税の特例
1)夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで控除できるという制度です。配偶者控除は一生に一度しか適用を受けることができません。
2)住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置
父母や祖父母などの直系尊属から、自己の居住の用に供する住宅の新築もしくは取得または増改築等のための金銭を贈与により取得した場合において、一定金額までの贈与につき贈与税が非課税になるという制度です。
3)教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
平成25年4月1日から令和5年3月31日までの間に、直系尊属(祖父母など)が、30歳未満の子・孫等(受贈者)名義の金融機関の口座等に、教育資金を一括して拠出した場合に、一定の要件を満たせば、この資金について、子・孫ごとに1,500万円まで非課税になるという制度です。
相続税対策としての贈与
法律に違反して相続税を減らす(脱税をする)のではなく、法律を利用して相続税を減らす(節税をする)方法は色々あるのですが、そのひとつに贈与をして相続財産を減らすという方法があります。
例1)1億円の相続財産を2人の子が相続したとします。
課税相続財産; 1億円-4200万円=5800万円
相続税額; (2900万円×15%-50万円)×2人=770万円
2人の相続税額は合計で770万円となります。
この例で、相続人に子供が2人と孫が4人いて、毎年子供と孫に1人当たり100万円ずつを10年間贈与したとします。
贈与をした財産の総額は100万円×6人×10年=6000万円となります。
贈与税は1年に110万円という基礎控除があるので、この例では贈与税はかかりません。
この例では、相続財産は1億円-6000万円=4000万円となり、相続税の基礎控除額4200万円以下なので相続税もかからなくなり、770万円節税できたことになります。
例2)2億円の相続財産を2人の子が相続したとします。
課税相続財産; 2億円-4200万円=1億5800万円
相続税額; (7900万円×30%-700万円)×2人=3340万円・・①
2人の相続税額は合計で3340万円となります。
この例で、相続人に子供が2人と孫が4人いて、毎年子供と孫に1人当たり200万円ずつを10年間贈与したとします。
贈与をした財産の総額は200万円×6人×10年=1億2000万円となります。
贈与税額; (200万円-110万円)×10%×6人×10年=540万円・・②
6人の贈与税額は合計で540万円となります。
課税相続財産; 2億円-1億2000万円-4200万円=3800万円
相続税額; (1900万円×15%-50万円)×2人=470万円・・③
この例では、贈与税が540万円発生するが、相続税が3340万円から470万円に減少するので、差し引き2330万円節税できたことになります。(②+③-①=-2330万円)