三重の法務労務コンサルタント

仕事(人事労務、海外人事、税務、法務など)で学んだことや、趣味(歴史や旅行など)で感じたことなどを記載します

海外勤務経験者の海外年金請求

 日本の会社から海外の会社に派遣されて勤務する場合、通常、日本と海外の両方の会社から給与を支給されており、従来は日本の年金と海外の年金の両方に加入して保険料を支払わなければならなかったのですが、海外での勤務期間が短いと海外での年金受給権の最低の加入期間を満たさないので、海外での保険料は掛け捨てになっていました。ただし、ほとんどの場合、海外での年金の保険料は海外勤務者本人が負担するのではなく、会社が全額負担していました。

 主に、この保険料の二重払いを防ぐために、海外と社会保障協定を結び、海外への派遣期間が5年を超えない見込みの場合には海外の年金には加入せず日本の年金のみに加入し、派遣期間が5年を超える場合には日本の年金には加入せず海外の年金のみに加入することになりました。

 日本は2000年2月から2019年9月までに23カ国(ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、イタリア、インド、ルクセンブルグ、フィリピン、スロバキア、中国、スウェーデンフィンランド)と社会保障協定を締結しています。

 また、海外での勤務期間が短くても海外での保険料が掛け捨てにならないように、協定により日本と海外の両方の年金への加入期間を通算して最低の加入期間を満たしておれば、それぞれの国の年金への加入期間に応じた年金が、それぞれの国から受けられるようになりました。(ただし、イギリス、韓国、イタリア、中国との社会保障協定にはこの保険期間の通算制度はありません)

 例えば、日本で厚生年金に40年加入し、同時にアメリカでも年金に5年加入していた場合、年金が受給できる最低加入期間は日本は10年(以前は25年でしたが、平成29年に改正され10年になりました)、アメリカも10年ですので、協定の締結前は、日本の年金はもらえるが、アメリカの年金は最低加入期間を満たしていないのでもらえなかったのですが、協定の締結後は通算すれば40年+5年=45年ですからアメリカの年金の最低の加入期間も満たしていることになり、日本では40年分の月額20万円程度、アメリカでも5年分の月額300ドル程度の年金をもらえることになりました。

 社会保障協定の締結前に海外で短期間勤務をしていた人は、海外での年金の最低加入期間を満たしていないので、海外の年金はもらえないだろうとあきらめていた人がたくさんいるようですが、このような人も社会保障協定が締結されたことにより海外の年金をもらえるようになっています。

 また、社会保障協定の締結前は、日本に居住している人が海外年金を請求する場合、直接海外の年金担当窓口に年金の請求をすることが必要でしたが、協定の締結後は協定相手国の年金の申請を日本で行う場合には、日本の年金事務所で海外の年金申請書を提出できるようになりました。

 ただし、日本の年金は請求が遅れても過去5年分は遡って受給できるのですが、海外の年金は受給権が発生したらすぐに請求をしないと、日本の場合とは異なり、遡っては受給されず、請求した月の翌月分からしか受給できない国があるので要注意です。

 社会保障協定の締結されていない国の年金を受給する場合は、自分で直接相手国に年金請求の手続きをしなければならないので、一般的に手続きが煩雑になりますが、社会保障協定が締結されている国の年金を受給する場合は、日本の年金と同様に住所地の年金事務所で請求手続きを行うと、日本年金機構を経由して相手国の機関へ送付されます。

 

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 中国・大連で交通整理をする女性警察官

 

 

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