三重の法務労務コンサルタント

仕事(人事労務、海外人事、税務、法務など)で学んだことや、趣味(歴史や旅行など)で感じたことなどを記載します

海外勤務者の社会保険

1.基本的な考え方は次のようになります。

日本の会社に籍をおかず、海外の会社に籍を移す場合は、日本の会社との雇用関係がなくなるため、日本での健康保険・厚生年金保険、雇用保険被保険者資格は喪失します。

日本の会社に在籍のまま、海外の会社で勤務する場合は日本の会社との雇用関係は継続しているので、日本での健康保険・厚生年金保険、雇用保険被保険者資格は継続します。

2.健康保険の海外勤務者への適用

健康保険は、昭和55年から外国の病院において療養を受けたときも療養費が支給されるようになっています。ただし、国内とは異なり、療養の給付として現物給付は行われないため、治療費を支払った後、療養を受けた病院で「診療内容証明書」と「領収明細書」をもらい、これに日本語の翻訳文を付けて日本国内で保険者(社会保険事務所等)に請求することになります。払い戻される金額は、日本国内で保険診療を受けたとして計算した金額から自己負担分を差し引いた額が上限となりますので、海外で支払った費用の7割が払い戻されるとは限りません。

3.厚生年金保の海外勤務者への適用

海外勤務者は、原則として海外でもその国の社会保障制度に加入することになりますが、引き続き日本の厚生年金保険の被保険者となるため二重に年金の被保険者となります。ただし、日本との社会保障協定が結ばれている国においては、赴任期間が5年以内の場合には、その国の社会保障制度への加入が免除されます。

4.健康保険・厚生年金保険の保険料

健康保険・厚生年金保険の保険料の算定については、大部分の海外勤務者は、給与の大半が現地払いとなっていて、国内払いの給与は少額となっているため、国内給与で標準報酬を算定すると低くなりすぎるので、多くの会社が、仮に国内勤務をしていたら支払われることとなる給与(理論上の基準内給与)を基礎として標準報酬の算定基礎届けを作成しています。

5.介護保険の海外勤務者への適用

介護保険については、原則として40歳以上の人が被保険者となりますが、海外勤務をする際に「介護保険適用除外該当届」を保険者(社会保険事務所等)に提出し、住民票を除票すれば、介護保険料を支払う必要はありません。海外勤務中に40歳を迎えた場合は、40歳になった誕生月に「介護保険適用除外該当届」を提出します。

6.雇用保険の保険料

雇用保険の保険料については、「その者が国内勤務に復する場合に支給されるべき金額と同等の額を限度」として基本手当日額を決定してよいとされています。国内給与が少額の場合、国内給与を算定基礎に用いた場合、帰国後1年以内に失業した場合には支給される失業給付が低額となる場合があります。

7.労災保険の海外勤務者への適用

労災保険は本来、日本国内にある事業場に適用され、そこに就労する労働者が給付の対象となる制度ですので、海外の事業場で就労する人は対象となりません。国内の事業場で就労していた人が転勤命令等で海外の事業場へ派遣された場合についても海外の事業場で就労する限り同様です。ただし、このような場合についても労災保険の給付が受けられる制度として、「海外派遣者特別加入制度」があります。派遣元の会社は、所轄の労働基準監督署に「特別加入申請書」を提出します。

「海外出張」である場合には、当該海外出張者に関して何ら特別の手続きを要することなく、その人が所属する事業場の労災保険により給付を受けられますが、「海外派遣」である場合には、当該海外派遣者に関して特別加入の手続きを行っていなければ、労災保険による給付が受けられないこととなります。

 

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