三重の法務労務コンサルタント

仕事(人事労務、海外人事、税務、法務など)で学んだことや、趣味(歴史や旅行など)で感じたことなどを記載します

コンプライアンス違反の罰則について

 コンプライアンスに違反すると、罰則が科されることがあります。罰則には、正式な罰と、そうでない罰とがあります。

 

 正式な罰とは、刑法に定めがある罰をいいます。死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料がそれで、刑の軽重の順序も重い順にその順序となっています。(刑法第9条 刑の種類、 第10条 刑の軽重)

 懲役と禁錮には、無期と有期とがあり、有期の場合は原則として1月以上20年以下となっています。(第12条、第13条)

 懲役と禁錮の違いは、刑務作業があるかないかです。懲役には刑務作業がありますが、禁錮には刑務作業がありません。刑務作業がない分、禁錮の方が軽い罪とされていますが、じっとしているのはつらいようで、多くの受刑者が、結局は志願して作業を行うのだそうです。

 拘留は、期間の短い(1日以上30日未満)禁錮のようなものです。(第16条)

 罰金と科料の違いは、科される金額の違いで、1万円以上が罰金で、千円以上1万円未満が科料です。(第15条、第17条)

 刑法では、罰金額の下限を設けていますが、上限については設けていないため、個々の法律の規定で罰金額の上限を定めています。法律によっては、独占禁止法のように「5億円以下の罰金」などと、非常に高額の罰金が定められていることもあります。

 具体的に科される罰則は、法令で定められた範囲内において裁判所により決められます。例えば、「第○条の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処する」とあれば、1万円以上30万円以下の範囲で、判決で罰金が決められるわけです。

 罰金を支払えない場合には、労役場に留置され、判決で決められた1日あたりの金額が罰金の額に達するまでの日数分、そこで作業をします。労役場留置の期間は、1日以上2年以下となっています。(第18条)

 

 正式でない罰の例としては行政上の手続違反の際に科される過料や交通違反の際に科される反則金などがあります。これらは、通常の裁判を経ないで科される軽いペナルティー金のようなものです。

 罰金は刑事罰であり前科(判決で刑の言い渡しを受けることで犯罪者名簿に記録される)となる刑罰であるのに対し、過料や反則金は行政罰であり前科にはなりません。

 ただし、交通違反反則金などを指定された期日までに納付しない場合には、通常の刑事事件として刑事処分の対象となり、簡易裁判所での略式命令で罰金が科されることになります。

 

 

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パワーハラスメントについて

 中央労働災害防止協会の調査によると、4割以上の企業がパワーハラスメントパワハラ)やこれに類似した問題が発生していると答えているそうです。

 パワハラは被害者に対し、士気の低下や能力の低下、心の健康を害する等の問題をもたらします。ひどいケースでは、うつ病や重い精神障害に罹り、場合によっては自殺者を出すこともあります。

 企業にとっても、職場風土の悪化や社員のパフォーマンスの低下、被害者へのサポートなど、さまざまや影響をもたらします。

 また、加害者や事業主への損害賠償責任などの法的責任を問われることもあります。裁判で違法なパワハラの責任を問われ、3100万円もの賠償が認められた判例もあります。パワハラの内容が刑法の規定(傷害罪、名誉毀損、侮辱罪など)に該当する場合には、被害者は加害者を警察・検察に対して刑事告訴する事もあります。パワハラによりメンタル不全に陥った場合には、労災認定される可能性もあります。

 以上のように、パワハラは企業にとって大変重要な経営上の問題になっているようです。

 現時点では、パワハラについての法的な定義はありませんが、裁判例などから、21世紀職業財団では、「職場において、職務上の地位や影響力に基づき、相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより、その人や周囲の人に身体的・精神的な苦痛を与え、その就業環境を悪化させること」と定義されています。

 その定義によれば、パワハラの判断基準は次のようになります。

1.職場において

  業務を遂行する場所を指しますが、時間外の宴会や休日の連絡などであっても、業務上の失敗を責める等、実質上の職務の延長である場合には該当します。

2.職務上の地位や影響力に基づき

  上司が部下に対し、その地位に基づいて行う行為です。直接の上司以外でも実質的に影響力がある者の行為も含まれます。

3.相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより

  業務上の必要性がない場合、合理的理由がない場合、業務上の監督・指導・教育であっても、相当性(表現、回数、態様等)を欠いている場合や、人格を非難、否定する内容の発言が該当します。著しく粗野・乱暴な言動も問題です。感情的な叱責も控えるべきです。

言動の例

  • 大声で怒鳴る、ゴミ箱をける、机をたたく、灰皿を投げる
  • 長時間部下を机の前に立たせたまま、ミスを執拗に責める

4.その人や周囲の人に身体的・精神的苦痛を与え

  本人がその出来事をどのように受け止めたかではなく、多くの人が一般的にどう受け止めるかという客観的な基準によって評価します。

5.その就業環境を悪化させる

  本人、周囲の人々の就業環境が不快なものとなったため、能力が発揮できないなどの看過できない程度の支障が生じることです。

 ただし、業務上必要な指導を、相当性を欠くとはいえない範囲で行うことは、相手がどう受け止めようと、パワハラではないといえます。業務上適切な指導は行わなければなりませんので、この点、注意が必要です。

 

 

 

 

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職場のセクハラをなくすために

1.職場のセクシュアルハラスメントが起こる背景、要因

 職場のセクシュアルハラスメントが起こる背景や要因については、性別役割分担意識や男女間にある異性に対する認識のギャップ、主に男性が「当たり前だ」と思い込んできた意識が女性にとっては「当たり前ではない」というギャップが大きな要因であり、それは、これまでのわが国の歴史の中で社会的に作られてきた側面が強いことが指摘されています。

 真にセクシュアルハラスメントの問題を解決させていくためには、わが国の社会生活に関わるすべての人々が、そのような背景、要因を正しく理解し、十分に認識することが必要です。

(1) 固定的な女性観~性別役割分担意識

 わが国では、まだ「男は仕事、女は家庭」といった男女間の固定的な役割分担意識や「男は度胸、女は愛嬌」といわれるような性的固定観念が根強く残っています。

また、女性を固有の能力・適性などで評価するのではなく、女性は男性より劣った性であり、男性が、男性は女性より優れているという優越意識・上下意識で見てしまう社会的風土があります。

 このような意識は、職場において、男性が女性を働く上での対等なパートナーとして見ない、「女性の仕事に対する意欲や能力は男性よりも劣っている」「重要な仕事は男性が担当するもの」「女性の業務は補助的・定型的なもの」という考え方につながっています。

 また、職場の中で、「男性の上司が女性の部下にタバコの買い物など個人的な用事を頼む」「お茶汲みは女性の仕事である」「女性は仕事を遂行する能力よりも周囲に対する気配りが大切である」「若い女性がいると職場の中が明るくなる」など、女性に対し、業務の遂行よりも「女としての役割(「女らしさ」や「気配り」など)」を期待することなどもこうした意識の現われといえるでしょう。

 これらから、わが国では、まだまだ、女性をひとりの人間として尊重するという人権意識が低いのではないでしょうか。

(2) 職場への性的関心の持込み

 職場とは、決められた目標や方法に従って業務を遂行する公的な場所ですが、わが国では、職場の中に女性を「性的な関心の対象としてみる」という私的な意識が持ち込まれ、公私の区別が曖昧であるような状況が往々にしてあります。

 「女性の体にさわる」「性的な冗談を持ち出して相手の反応を楽しむ」「性的関係を求める」、といった言動は、女性を「性的な関心の対象としてみる」ことから起こっているものですが、プライベートにおいても、相手の意に反してこのような言動を行うことが許されないにもかかわらず、業務の遂行を目的とした職場にこのような言動が持ち込まれ、セクシュアルハラスメントが引き起こされていると言えます。

(3) 男女間にある性に対する認識のギャップ

a 男女間にある認識ギャップ

 性に関する言動の受け止め方には、女性と男性では大きな差があります。

 例えば、「スタイルがよい」「足がきれい」「色っぽい」などと、男性からすれば、「ほめている」「親しさのつもりで言った(性的な)ジョーク」であったとしても、相手の女性にとっては、「ほめられて嬉しい」どころか、「不快な発言」や「いやがらせ」にしか聞こえないこともあり、すべての女性が「男性からの親しさの表現」として受け止めるとは限りません。同様に、「足が太い」「色気がない」などの発言は、当然に不快な発言になるものと考えた方がよいでしょう。感受性は人それぞれであり、人によって言動の受け止め方に違いがあるのは当然のことです。

 性的な感覚についての男女間の差、そして、相手の気持ちや感じ方を理解しようとしない意識がセクシュアルハラスメントの大きな要因になることを認識しましょう。

b 性に関するダブルスタンダード

 従来から、わが国では、性に関して「男性に寛容」で「女性に厳しい」というダブルスタンダード(二重の基準)がみられます。

 例えば、職場の中で、男性の女性に対する性的な行動を伴うセクシュアルハラスメントが明らかになった場合、周囲の人(特に男性)は、加害者である男性を、「普段は真面目な人なのに」「男だから仕方がない」などと擁護し、一方、被害者である女性には、「嫌ならはっきり断るべきだ(合意していたのではないか)」「そんなことを問題にして恥ずかしくないのか」などと、あたかも女性の側に非があるかのような発言をすることが少なくありません。

 これらの発言は、「女(男)はかくあるべき」「女(男)のくせに」などという偏見や先入観に基づくものであり、「加害者を擁護し、被害者を責める」という、事の本質を全く見誤った対応であるばかりか、被害者が被害を訴え、問題解決を図ろうとする行動を抑制させてしまいます。残念ながら、これまでのセクシュアルハラスメントをめぐる問題では、このような対応が数多く発生しています。このことをしっかりと認識しなければなりません。

c コミュニケーション不足

 男女間の認識のギャップを解消するため、職場における男女間のコミュニケーションの積み重ねが非常に重要なポイントですが、現実には、お互いに相手の立場を尊重することなく、コミュニケーションが十分に図られていない状況がみられます。

 例えば、男性が、女性と会話をしようとする場合、女性を名字で呼ばずに「○○ちゃん」と「ちゃんづけ」で名前を呼んだり、愛称や「彼女」「女の子」などと呼ぶこと、逆に年輩の女性を「おばさん」と呼ぶこと、あるいは、女性の容姿や年齢、恋愛や結婚に関する話題を取り上げることが多くみられます。また、男性が女性とコミュニケーションを図る手段として、酒席に誘うことも見られます。しかし、そのような男性の言動に疑問を持つ女性は少なくありません。

 男性が女性を愛称で呼ぶような場合、発言される言葉に対する感じ方が女性によって異なる場合がありますが、常に相手の立場を尊重し、十分なコミュニケーションに努めていれば、相手が何を不快と感じるかがわかり、そのような言動はなくなっていくことでしょう。

(4) 企業における女性の雇用管理方針のあり方~男性優位・男性中心の雇用管理 

 職場におけるセクシュアルハラスメントの背景を捉えるには、企業全体の雇用管理の問題を改めて検討することも必要です。

 最近でこそ、男女共同参画社会実現の取り組みが始まっていますが、これまで、わが国の企業においては、女性を男性の働く上での対等なパートナー、貴重な戦力として位置付けることなく、男性中心の雇用管理が行われてきました。企業の基幹的な部分には男性を配置し、重要な決定を男性が独占する一方、女性については、定型的・補助的な業務を中心にして、重要な決定には参画する機会を与えないという雇用管理が多くの企業で行われてきました。

 このような雇用管理のあり方が、女性の能力発揮の機会を奪うとともに、男性の女性に対する優越意識を生じさせ、「女性は仕事ができない」「女はでしゃばるな」「女のくせに」などという職場の意識や職場環境につながり、セクシュアルハラスメントを生み出す温床となってきたものと考えられます。

 個々の職場においては、企業全体の方針や対応が、そこで働く人々の意識や行動を強く拘束することには間違いがありません。今後、企業においては、男性を中心とした雇用管理を見直し、働く上で女性を男性の対等なパートナーとして位置付け、男女個々人の能力や適性に応じた適正な雇用管理が求められます。

セクシュアルハラスメントは、「個人的な問題」や「特別な人によって引き起こされる特殊な問題」でないことを理解する!* 

 これまでは、セクシュアルハラスメントは個人間の問題であり、「魅力的な女性にのみ起こる問題」、「特殊な性癖を持つ男性の個人的な行為で一般化はできない」などと言われてきました。しかし、現実に起こった職場でのセクシュアルハラスメントをみると、固定的な女性観、性的役割分担意識やダブルスタンダードの考え方が当然視されている職場の中で、ごく普通の男性が、地位や職務権限を利用して起こしています。

 セクシュアルハラスメントが起こる背景・要因に固定的な女性観、性的役割分担意識、性に関するダブルスタンダード、男性中心の雇用管理等の考え方があり、それらに職務上の地位や権限が関わって起こっている以上、「個人的な問題」や「特別な人による特殊な問題」ではありません。

 セクシュアルハラスメントは、誰もがその加害者や被害者になる可能性があり、加害者が特に意識していなくても起こり得るものなのです。

 

2.職場のセクシュアルハラスメント防止のために

 職場のセクシュアルハラスメントを防止するため、それが起こる背景・要因を正しく理解し、対応する必要があります。具体には、女性を男性の働く上での対等なパートナーとして位置づけるとともに、固定的な女性観、性別役割分担意識を解消していくことが大切です。また、男女が対等のパートナーとして働き続けることができるよう、一人一人の努力が求められます。

(1) 固定的な女性観、性的役割分担意識の解消

 わが国では固定的な女性観、性的役割分担意識が根強く残っており、これが職場で女性を男性の働く上での対等なパートナーとして位置づけることを妨げ、女性に対し、業務とは関係のない「女としての役割」を求める原因になっていると考えられます。

 また、これらは「職場への性的関心の持込み」「男女間にある性に対する認識ギャップ」「男性優位・男性中心の雇用管理」の背景ともなっており、意識的に対応していなければ、当然のように「職場の常識」となってしまうものです。

 職場において、固定的な女性観、性的役割分担意識をなくし、男女が対等な立場でお互いを尊重し、その能力と経験等に基づき働くことができる職場環境を整備することがセクシュアルハラスメントを起こさない環境づくりです。

(2) 男女間にある性に対する認識のギャップについての理解と認識

 セクシュアルハラスメントの問題では、加害者の男性と被害者の女性との間に当該言動に対する認識のギャップが往々にしてあり、男性は、「ジョーク」「親しみの表れ」「そんなつもりはなかった」、「嫌なら断ればよかったのに」という場合が多いのに対し、女性は、「不快である」「恐怖を感じた」「とても断れるような状況ではなかった」「相手が地位を利用した」という場合が多くみられます。

 これは、言動を受けた女性が大げさに騒いでいるというものではありません。男性が親しみのつもりで言ったとしても、女性は、不快、いやがらせと感じるなど、男女間に性に対する認識のギャップが背景にあることを理解する必要があります。また、性に関し、「男性には寛容」で「女性には厳しい」というダブルスタンダードの考え方が、女性に「必要以上のモラルを要求する」一方、男性には「必要なモラルをも要求しない」という、男女に異なった基準が適用されている状況がこのような認識のギャップを生じさせる背景になっていると考えられます。

 このような男女間にある性に対する認識のギャップを理解し、その認識を深めることがセクシュアルハラスメントの防止につながります。

 (3) 労働問題であることへの十分な理解と認識

 職場のセクシュアルハラスメントは、企業の雇用管理のあり方や職務上の地位や権限が関わって起こっており、また、職場環境の悪化ととともに、被害者の配置転換や賃金上の不利益、場合によっては解雇や退職といった不利益を生じさせるなど、労働問題として捉える必要があります。

 セクシュアルハラスメントの被害者は、精神的なダメージ(不利益)に加え、解雇・退職に至るケースが多いなど、二重の不利益を被っており、その意味で非常に深刻な労働問題であるといえます。

 職場のセクシュアルハラスメントが労働問題であることを十分に理解・認識し、事業主等による雇用管理上の対応を進めることが防止のポイントです。

(4) 人の嫌がることをしない・言わない風通しの良い職場環境づくり

 私たちは、職場の中で上司や同僚と協力しながら働いており、誰もが快適に働き、生産性を上げるためにも良好な人間関係が必要です。このため「人の嫌がることをしない、言わない」という、人として当然のマナー、ルールを守ることが基本となりますが、実はこれがセクシュアルハラスメントをなくす上でも基本です。

 風通しの悪い職場では、人間関係が希薄で思いやりにかけたり、思っていることが自由に言えないため、知らず知らずに他者を傷つける発言をしてしまったり、不快と感じる言動に異を唱えられないことが多いものです。特に、女性を補助的な役割として扱い、女性の発言を重視しない職場では、性的な言動を女性が不快に思っても口に出して言うことは困難であることが多いものと思われます。

 誰もが自由に意見を述べ、気軽に相談し合えるような風通しの良い職場環境づくりがセクシュアルハラスメントの防止につながります。

(5) 女性軽視・女性差別を許さない職場環境づくり 

  セクシュアルハラスメントは、

・ 女性を軽視する言動(「女に仕事はまかせられない」、「女のくせに口答えするとは生意気だ」など)

・ 結婚・妊娠・出産・生理などを嫌悪、揶揄する言動(「結婚したのになぜ退職しない」「子持ちは仕事をするものではない」など)

・ 女性としての役割を求める言動(お茶くみ、雑用の強要、宴会でのお酌・デュエットの強要など)

などが日常的に存在する職場において起こりがちだと言われています。

 このような「お茶くみは女性の仕事」とか「女には仕事を任せられない」という言動は、ジェンダーハラスメントと理解されているものですが、セクシュアルハラスメントをなくすため、ジェンダーハラスメントについての理解も深める必要があります。女性軽視・女性差別のない職場環境づくりが求められています。

(6) プライバシーに関する過度な干渉を行わないこと

 わが国では、職場においてプライベートな事柄が話題にされがちです。

 しかし、プライベートな事柄に関する受容範囲には個人差があり、また当人同士の人間関係にも影響を与えます。職場は業務を遂行する場所という当然のことを再確認し、プライバシーに関する過度の干渉を行わないことが、セクシュアルハラスメントを防止することとなります。

 

 

 

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育児・介護休業法について

育児・介護休業法の概要は次のようになっています。

1.育児休業制度

 労働者は、申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間、育児休業をすることができる。

 1ー2)両親ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2ヶ月に達するまでの間に1年間の育児休業をすることができる。

 1-3)一定の場合(保育所に入所できない場合や傷病により子の養育が困難になった場合など)には、子が2歳に達するまで育児休業をすることができる。

2.介護休業制度

 労働者は、申し出ることにより、対象家族1人につき、常時介護を必要とする状態に至るごとに1回、通算して93日まで、介護休業をすることができる。

3.子の看護休暇制度

 小学校就学前の子を養育する労働者は、申し出ることにより、小学校就学前の子が1人であれば年5日まで、2人以上であれば年10日まで、病気・けがをした子の看護のために、休暇を取得することができる。

4.介護休暇制度

 要介護常態にある対象家族の介護を行う労働者は、申し出ることにより、要介護常態にある対象家族が1人であれば年5日まで、2人以上であれば年10日まで、介護のために休暇を取得することができる。

5.短時間勤務等の措置

 事業主は、3歳未満の子を養育する労働者であって育児休業をしていない者について、労働者の申し出に基づく短時間勤務の措置を講じなければならない。

 事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者であって介護休業をしていない者について、次のいずれかの措置を講じなければならない。

 短時間勤務制度、フレックスタイム制度、始業・終業時刻の繰上げ繰り下げ、介護費用の援助措置

6.所定外労働の免除

 事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合には、所定労働時間を超えて労働させてはならない。

7.時間外労働・深夜労働の制限

 事業主は、小学校入学までの子を養育し、又は要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者が請求した場合には、1ヶ月24時間、1年150時間を越える時間外労働、及び深夜における労働をさせてはならない。

8.転勤についての配慮

 事業主は、労働者の転勤については、その育児又は介護の状況に配慮しなければならない。

 

 なお、事業主は、休業等を与える義務は負いますが、休業中の賃金支払までは義務付けられていません。

 休業中に賃金が支払われない場合には、社会保険雇用保険から給付金が支給されることになります。

 休業と社会保険雇用保険の関係は次のようになります。

1.産前産後休業

 1)出産手当金

  被保険者が出産のため休業した場合、出産日以前42日、出産日後56日までの間で休業した日について標準報酬日額の3分の2相当額が健康保険から支給されます。

 2)出産・育児一時金

  被保険者又は被扶養者が出産した場合、子供1人につき42万円が健康保険から支給されます。

2.育児休業

 被保険者の育児休業期間中、休業開始時賃金の67%(但し6か月経過後は50%)の額が雇用保険から支給されます。

 育児休業期間中の社会保険料は労使ともに免除されますが、年金の計算では保険料を支払ったものとして計算されます。

ただし、社会保険料が免除されるのは育児休業だけで、産前産後休業と介護休業では、社会保険料は免除されません。

3.介護休業

 被保険者の介護休業期間中、休業開始時賃金の67%の額が雇用保険から支給されます。

 

 

 

 

 

 

 

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アメリカの人種差別主義者

 5年ほど前に人種差別、宗教・民族差別、女性差別的な発言を繰り返していたトランプ氏がアメリカの大統領選で当選したことに驚いていたのですが、さらに翌年に中東やアフリカなど7か国の人の入国を禁止したトランプの大統領令について、世論調査ではアメリカの49%の国民がそれに賛成しているという報道には驚きました。

 最近の世論調査でも、アメリカ国民の41%(特に共和党支持者の85%)が、前トランプ政権時代の政策を支持しています。

 今のアメリカは黒人のオバマさんが大統領になったり、女性のクリントンさんが有力な大統領候補になったりしていたので本当に自由で平等な民主主義の国になっており、人種・宗教・性別などにかかわらず、誰でも能力に応じて活躍できるような国になっているのかと思っていたのですが、いまだにアメリカの白人には根深い人種差別意識が残っていたようで随分とショックを受けました。

 今のアメリカの住民は約62%が白人で約38%が有色人種ですが、トランプ氏を支持した有色人種はほとんどいなかったようですから、白人のうち6割以上の人はトランプ氏を支持していたようで、いまだにアメリカの白人には人種差別意識がそんなに残っているのかと本当に驚きました。

 ただし、まだ希望が持てるのは、アメリカの白人でも知識人などはほとんどトランプの差別主義政策に反対していたこと、全米で数百万人の白人などの若い男女が反トランプのデモに参加していたこと、ヨーロッパでも多くの白人などがトランプの人種差別主義に反対してデモに参加していたことですね。

 

 アメリカでは南北戦争後の1865年に奴隷制度が廃止されましたが、黒人に対する差別はその後も続いていたようです。

 例えば、1884年にはアメリカの大リーグで有色人種排除の不文律の取り決めがされており、その後1947年にジャッキー・ロビンソンドジャースでプレイするまでの約60年間黒人など有色人種は一人も大リーグではプレイしていません。

 彼は太平洋戦争の時に大学を中退して陸軍に入隊したのですが、バスの中で前部座席に座っている黒人(有色人種)は白人にその席を譲り後部座席に移らなければいけないという規則に逆らって白人に席を譲らなかったので、陸軍を解雇されています。

 太平洋戦争においても、黒人兵士が戦線で戦う場合は黒人部隊としての参戦しかできなかった上に、航空隊から黒人は排除されており、さらに黒人が佐官以上の階級に任命されることもなく、アメリカの軍内には制度的な差別や感情的な差別が蔓延していたようです。

 除隊後、彼は黒人なのでメジャーリーグではプレイできず黒人リーグでプレイしていたのですが、当時のドジャースの社長がメジャーリーグに黒人選手を起用したいという革新的な考えをもっていたので、ドジャースと契約することになりました。

1947年に彼が黒人として初めてメジャーリーグでプレイすると、ドジャース相手にはプレイしないというチームや彼の頭めがけてボールを投げてくるピッチャーもいたそうです。その後、彼はMVPを受賞したり、ドジャースを6度リーグ優勝させるなどの活躍をしています。

 1955年には、黒人女性のローザ・パークスが公営バスで運転手から白人に席を譲るように命じられたが、バークスがこれを拒否したため、「人種分離法」違反で警察官に逮捕され投獄されるという事件を契機に黒人のバス・ボイコット運動も起きています。

 

 私が中学生の時に学校の英語の先生から聞いた話ですが、先生は太平洋戦争の終戦時にシンガポールで捕虜となったことがあったが、その時にイギリス人の若い女性が日本人捕虜の若い男性がいる前で平気で裸になって風呂に入ったのでショックを受けたという話を聞きました。私はその話を聞いて最初若い女性の裸を見れたのに何でショックを受けたのかと不思議に思ったのですが、先生が言うには、お前たちも犬に裸を見られても恥ずかしくはないだろうが、同じ人間の異性に裸を見られたら恥ずかしいだろう、そのイギリス人の若い女性は我々日本人の若い男性を同じ人間だとは思っていなかったのでショックを受けたのだと言われました。

 

 20世紀初頭のアメリカでは、黒人だけではなくすべての有色人種に対する制度的な差別が、合法的に行われていたようです。これらの人種分離法は、交通機関やトイレ、学校や図書館、ホテルやレストランなどにおいても、白人が有色人種すべて(当然、日本人も含まれています)を分離することを合法とするものでした。

 1950年代後半から、アメリカでは黒人など有色人種が白人と平等な諸権利を要求する公民権運動が活発になり、1961年に大統領となったケネディは黒人に公民権を認め、差別撤廃に乗り出す方針を示し、キング牧師らが差別に反対する黒人や白人を指導して政府にその政策の即時実施を迫りました。

 法律上は人種差別の終わりとなるこの公民権法が成立したのはケネディ大統領暗殺後の1964年ですが、公民権運動に対する多大な貢献が評価されノーベル賞も授与されたキング牧師は、その4年後に貧困労働者だった白人によって暗殺されています。

 人種差別が法的に撤廃されて50年以上経っても、アメリカの白人の潜在的な人種差別意識はなかなか無くならないようですね。

 

 

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個人の債務整理について

 現在、消費者金融サラ金)、信販ローン、商工ローン、高金利業者等の金融業者を複数件利用して、多重債務超過に陥り、返済困難または支払不能となっている債務者は、全国で数百万人いると言われていますが、そのうち多くの債務者は有効な債務整理手続をとっていないようです。

 法律は、多重債務で困っている人を助けるために、任意整理、特定調停、民事再生、自己破産という4つの法的な手続を用意しています。

 

1.任意整理

  任意整理は、法律専門家が各債権者(金融業者)と和解交渉をして、利息制限法や出資法に基づき再計算をして、過払金充当額(払い過ぎた利息を元金に充当して残金を減額)・債務不存在確認(払い過ぎた利息を換算すると既に債務が無い)・過払金返還請求(払い過ぎた利息を全額返してもらう)・不当利得返還請求等の法的手段を用いて負担を軽減させ、正当な債務が残存する場合には無理の無い返済を目的とした合意和解により債務整理を行うという制度です。

 任意整理は、裁判所を通さないため、債権者はこの話し合いに応じる義務がありません。事実上、債務者個人で債権者にかけあっても、相手にされないことが多いため、法律専門家の関与が必要になります。依頼を受けた弁護士、認定司法書士は事件を受任した旨の通知を各債権者に送ることになり、各債権者はその通知を受け取った時点から、依頼人に対して直接取立てをすることができなくなります。債権者との和解案ができた場合には、和解案に従って、原則3年間で債務を返済していくことになります。

 債務者の負担を軽減できる理由は、ほとんどの金融業者が「利息制限法」に違反しているからです。利息は、利息制限法と出資法という2つの法律で決められています。利息制限法の上限は、元金の額により年15~20%ですが、これに違反しても罰則はありません。一方、出資法の上限は年29.2%と定められており、これに違反すると5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処せられることになります。任意整理や特定調停では、今までの支払いのうち利息制限法の上限利率を越えている部分を計算しなおして元金の支払いに充当し、債務を減額させます。

 ただし、銀行などの金利が低いところで借金をしている場合は元金の減額はできませんし、3年程度の期間で返済していかなければなりませんので、借金の総額が大きい場合には、無理な返済計画を立てるよりも、最初から自己破産を選択した方がいいと思います。

 

2.特定調停

 特定調停は、簡易裁判所の管理下で、調停委員会が各債権者と債務者の仲介に入り和解協議をして、利息制限法や出資法に基づき再計算をして、過払金充当額・債務不存在確認・過払金返還請求・不当利得返還請求等の法的手段を用いて負担を軽減させ、支払義務のある債務に対しては原則3年間無利息にて支払計画を立て、余裕のある分割返済を目的とした協議和解により債務整理を行うという制度です。特定調停の手続完了後は、返済額に利息をつける必要がなくなります。

 特定調停は、裁判所における任意整理のようなもので、裁判所が間に入り話し合いを行いますので、専門家に依頼しないで、自分で申立をしても不利益になることはありません。

 特定調停で合意が成立した場合に作成される調停調書には判決と同じ効力があります。

 特定調停の問題点は任意整理と同様で、低い金利で借金をしている場合には元金が減ることはありませんので、あまり効果的な債務整理の方法ではありません。

 

3.個人の民事再生

 民事再生とは、裁判所の監督のもとに、債務の支払いを停止した上で、債務の一部免除や長期の弁済条件などを盛り込んだ再生計画に基づき返済を行うという制度です。

 個人の民事再生は、債務者の管轄の地方裁判所に申立をして、自宅等の所有不動産物件を保守しながら、住宅ローン以外の債務を、小規模個人再生または給与所得者等再生のいずれかの方法で、原則として負債総額の20%を原則3年間にわたり弁済してゆき、住宅ローン自体も最長10年間支払期間を延長することができ、マイホームを失う事なく債務の大幅な圧縮を行うという制度です。

 ただし、マイホームを所有していない場合や処分されると困るような財産が無い場合は、わざわざ民事再生を選択するメリットがありませんので、自己破産を選択した方がいいと思います。

【個人民事再生の条件】

 1)住宅ローン等を除く無担保債務総額が5,000万円以下で、将来において固定的に収入を得られる見込があること

 2)小規模個人再生については、債権者数・債権総額の50%以上の同意があること

   (給与所得者等再生の場合は、債権者の同意は不要です)

 

4.自己破産

  自己破産は、債務超過で苦しんでいる人を救済し、再び立ち直るチャンスを与えるために作られた制度です。従って、一般に考えられているほどの不利益があるわけではなく、免責さえ受けてしまえば今後の生活に支障があるとすれば7年間はローンやクレジットの利用ができなくなるということだけです。戸籍や住民票に記載されることはありませんし、選挙権も失われません。官報で公告されることになりますが、一般の人が官報を見ることはほとんどないと思いますので、多分、一般の人に知られることもないと思います。

 申立人はまず申立書を申立人の住所地を管轄する地方裁判所に提出することになりますが、自己破産をするための要件を満たしていなければなりません。自己破産をするための要件とは、借金をどうしても返せない状態であると裁判所が判断した場合になります。目安としては、申立人の収入から最低限の生活費を引いた残りの額で、借金を3年以内に分割返済できなければ、支払い不能の状態と判断されます。

 自己破産では、借金についての責任を免除してもらう代わりに、生活必需品などを除いて、所有している財産はすべて処分の対象になってしまいますので、どうしても手放したくない財産がある場合などには、他の方法を選択しなければなりません。

 破産手続きとして「管財事件」と「同時廃止事件」とがあります。「管財事件」とは破産宣告の後、一定の財産(99万円以上)がある場合などには破産管財人(裁判所から選任された弁護士で、破産の申立を依頼した弁護士とは違います)が選任されて財産や借金を調査し、換金して債権者に配当するという手続を行うものです。「同時廃止事件」とは、債務者に財産が無い場合などにこの手続を省略するものです。

 破産宣告の後、免責の申立をし、免責の決定がされれば借金は帳消しとなり、ローンやクレジットが利用できなることを除き、自己破産手続中に受ける不利益(弁護士や税理士等の一定の職業に就けなくなるという資格制限など)も解除されることになり、破産宣告以前の状態に戻ることになります。

 

 

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取締役の権限・義務・責任

 取締役は、取締役会に出席して会社の業務執行に関し意見を述べる権利と義務を有し、業務執行の決定や監督に関し大きな権限を与えられていますが、同時に会社の業務が適切に行われるよう注意する義務があります。

 この義務に違反して、会社や第三者に損害を与えると、損害賠償責任を負う場合があります。

◎ 取締役の義務

1.代表取締役の業務執行に対する監督義務

 代表取締役が、取締役会決議に基づかず、独断的に権限を行使する、といったことがあるかもしれません。この場合、他の取締役は、これを放置することはできません。取締役は、代表取締役の業務執行を全面的に監督する権限を有しているからです。他の取締役は、代表取締役の独断的業務執行に対して、取締役会を開き、代表取締役の独断行為を是正させるようにしなければなりません。

 さらには、 法令又は定款違反行為が、取締役会決議に基づいてなされることがあるかもしれません。この場合、議案に反対し、かつ、議事録に異議がある旨を記載することが重要です。それは、違法行為が取締役会決議に基づきなされた場合、決議に賛成した取締役は任務を怠ったものと推定され、さらには議事録に異議があることを記載していなかった取締役は、決議に賛成したものと推定され(会社法369条5項)、責任を追及されることになる場合があるからです(会社法423条3項3号)。

2.忠実義務

 会社法355条は、「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」と規定しており、この義務を「忠実義務」といいます。この忠実義務の一つは、自己又は第三者の利益を優先させて会社の利益を犠牲にするようなことをしない、ということです。例えば、取締役が他社の取締役となること自体は、原則として許されますが、もし他社の仕事に時間と労力を費し、自社の取締役としての職務に悪影響を及ぼすおそれがあるときは、忠実義務違反となる可能性があります。

3.競業避止義務

 会社法356条1項は、「取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。」と規定しており、取締役が会社と競業するような取引を行なう場合を挙げています(会社法356条1項1号)。つまり、取締役は、取締役会が設置された会社では取締役会の承認を得なければ、又は、取締役会が設置されていない会社では株主総会の承認を得なければ、会社と競業するような取引を行えないのです。

 この競業には、取締役が、自分で又は他の会社の代表取締役となって取引をするような場合のほか、他の会社の平取締役である場合や、「事実上の主宰者として他の会社を経営する」ことも含まれます。

4.会社と取締役の取引の規制

 取締役と会社の利益が相反する行為を取締役が行う場合、取締役会の決議が必要です(会社法356条1項2号、会社法365条1項)。その一つが、会社と取締役の取引です。例えば、取締役が会社に自分の商品を売る(その逆も同様)、会社が取締役に金銭を貸し付ける、といったものです。

5.会社と取締役の利益相反行為の規制

 会社と取締役の取引のほか、一般的に、会社と取締役の間に利益が相反する行為も、取締役会の決議が必要です(会社法356条1項3号、会社法365条1項)。その例としては、会社が取締役の債務を保証する、といったことがあります。

 

◎ 取締役の責任

1.取締役の会社に対する責任

 取締役が、その任務を怠ったり、違法行為(例えば、総会屋に対する利益供与をすること、利益がないのに配当することなど)により会社に損害を与えた場合、会社に対して損害賠償の責任を負うことになります。

2.取締役の第三者に対する責任

 株式会社が第三者に対して負っている債務については、取締役であるからといって、それだけでその取締役が、会社の債務を負うことにはなりません。それは、会社と取締役は、別個の存在だからです。

 ただし、以下のような場合には、取締役が会社の債務を負うことがあります。

(1)取締役が、(連帯)保証している場合

取締役が(特に多くの場合代表取締役が)、会社の債務につき個人で(連帯)保証していることがあり、この場合、取締役が会社の債務について責任を負うことになります。

(2)取締役に職務執行につき故意又は重過失がある場合

取締役がその職務を行うにあたって故意又は重過失があったときは、その取締役は、第三者に対して、損害賠償の責任を負う場合があります(会社法429条)。これは、取締役が貸借対照表損益計算書、営業報告書等に虚偽の記載をし、又は虚偽の登記・公告をしたときも同様の責任です(会社法429条2項1号イ~ニ)。

 実務上、会社が倒産した場合に、取締役の責任を追及する場合、取締役のこの責任を根拠とすることがあります。例えば、支払の殆ど不可能な手形を濫発した、粉飾決算をしていた、などが問題になることがあります。

 また、この職務執行についての故意又は重過失は、代表取締役ではない取締役の、代表取締役に対する監督義務違反にもあてはまることがありますので、注意が必要です。

 

 

 

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